自己啓発の強制についてファイナンス的に考えてみた【専門用語は極力排除】

Concept

職場で自己啓発という名のプライベートの犠牲を強制的、あるいは半強制的に迫られた経験は無いでしょうか。ただでさえ仕事が忙しいのになんでこんなことをやらないといけないんだ、とか、モチベーションが全然湧かない、といった悩みを持った方も結構いらっしゃると思います。

資格などを取ることで給料が増えたり手当がもらえるならまだ良いですが、それすら無いといったケースもあると思います。

この記事では、自己啓発の強制に対するもやもやした気持ちをファイナンス的に考えていきたいと思います。

この記事はこんな方に向けて書いています。

  • サラリーマン
  • 給料が増えないのに自己啓発すること(資格を取ること)に疑問を持っている方
  • 自己啓発のモチベーションが湧かなくて困っている方
  • なんとかして自己啓発を回避出来ないかと考えている方

給料が増えない自己啓発は無駄なのか

結論から言うと、必ずしも無駄ということはなく、むしろ有益であることの方が多いと考えます。

皆さんは「人的資本」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。人的資本とは、人が体力や時間を消費してその対価として収入を得る力を金額に換算したものです。

金額に換算する時に気をつけなければならないのは、「現在価値」に換算しないといけない点です。

ファイナンスでは、現在価値で考えることが何よりも重要です。

現在価値という言葉はファイナンスに馴染みが無いとピンと来ないかもしれませんが、ご安心ください。解説します。

現在価値とは

現在価値の説明のために使い古された質問となりますが、今100万円もらえるのと、1年後に100万円もらえるのでは、どちらが嬉しいですか?

ほぼ全ての人が感覚的に今100万円もらえる方が嬉しいと感じると思いますが、それはファイナンス的に正しいです。

銀行に預ける

もし今銀行に100万円を預けることで、1%/年の利息が付くとします(実際にはこんなに付かないですが・・・。2021年1月時点)。この時、今100万円をもらって銀行にそれを預ければ、1年後には101万円になるので、今100万円もらう方が、1年後に同額もらうよりもお得であることが理解できると思います。

銀行に預けた場合の、1年後にもらう101万円を将来価値、今の100万円を現在価値と言います。

売れないお笑い芸人に貸す

では、先程の「銀行にお金を預けると1%/年の利息が付く」という前提を引き継いで、次に別な例として、売れないお笑い芸人にお金を貸すケースを考えましょう。もしあなたに売れないお笑い芸人の友達がいたとして、彼/彼女に「1年後に101万円にして返すので、100万円貸して欲しい。」と頼まれたら、あなたはどうするでしょうか。

義理・人情を置いて考えれば、貸すべきでは無いと考えます。なぜなら、銀行に預けた方がより安全に、1年後に101万円を回収できるからです。

回収できないリスクが高い友達にお金を貸す場合は、もっと高い利息を付けて返してもらわなければ、割に合わないということになります。

売れないお笑い芸人に貸す場合の、1年後にもらう101万円を将来価値とした時、現在価値は100万円を下回ることがお分かりいただけるでしょうか。

割り引いて考える

つまり、不確実な将来は割り引いて考える必要があり、不確実性がより高い場合は、より大きく割り引かなければならないということです。

あなたが今月給30万円を得られているとして、1年後、5年後、10年後にそれ以上の金額を得られる保証はあるでしょうか。予測不可能な危機に見舞われて、会社が倒産する、リストラされて突然収入がゼロになるリスクもあります。その時、自己啓発を通じて知識やスキルを蓄積しておけば、他の会社、あるいは起業して自力で、将来も安定した収入を得られる可能性が高まります。

給料が増えずとも、自己啓発は将来の不確実性を低減する効果があるので、人的資本(現在価値)を増大させる効果があり、有益であることが多い、というのが結論です。

現在価値については、色々端折って記載していますので、分かりづらい点もあると思います。別記事で改めて詳細を解説しますので、そちらもご参照ください。

自己啓発のモチベーションをどう高めるか

自己啓発は人的資本を増大させる効果があることは何となく理解いただけていたら嬉しいですが、もう少しイメージを具体化していきましょう。

サバイバル力が高まる

先程の内容と被りますが、会社が潰れても、リストラされても、蓄積した知識やスキルを生かして、別な場所で収入を獲得する可能性を高めることができます。

そこまではいかずとも、例えば、職場内の人間関係や、上司等からのハラスメントにより会社に居づらくなった時に、その環境から逃げ出せる可能性を高めます。

会社にしがみ付かざるを得ないと、どんどん精神的に追い詰められて、メンタルヘルスを損なう結果にもなりかねません。

転職のチャンス

今の会社では手当が出ず、昇進への効果も期待できない場合であっても、別な会社では違う事情があるかもしれません。この記事では、不確実性を低減する効果にフォーカスして解説してきましたが、転職により安定して収入を増やすチャンスも拡大すると考えます。

希望通りの人事異動

異動したい部署あるいは拠点はあるでしょうか。

人的資本を高めることにより転職のチャンスが拡大する可能性があることは前述の通りですが、派生して、「希望が叶わないなら退職します。」と上司に言った時の迫真性が高まります。というのは冗談半分ですが、人事異動に限らず、社内での発言力が高まることは間違いありません。

自己啓発を回避するには

自己啓発の効果は何となくわかったものの、それでもオンオフの切り替えはしっかりしたい、プライベートの時間で仕事に関連する一切に触れたく無いという方もいらっしゃるかもしれません。

回避方法はあります。仕事を選ぶことです。

重要なのは人的資本を増大させることですので、自己啓発以外で人的資本を増大させれば良いのです。専門性が高く、かつなるべく汎用性が高い仕事を選びましょう。誰でもできるルーチンワークは避けるべきです。

ただ、言うのは簡単ですが、いつも希望通りの仕事を割り振ってもらえるとは限らないのが難しいところです。

結論

「自己」啓発なのに自発的ではなく強制あるいは半強制されるというもやもやした気持ちに、ファイナンス的に応えてみました。

  • まず、現在価値に割り引いて考えることがが大切であることを説明しました。
  • 自己啓発は、将来の不確実性を低減し、人的資本(現在価値)を増大させるので、結果的には有益だとだと考えています。
  • イメージしやすいように、自己啓発の効用についてより具体的な例を示しました。
  • 自己啓発を回避する方法はあるものの、別な難しさがあることに触れました。

是非前向きに捉えて、自己啓発に取り組むことをお勧めします。いずれにしても、人的資本あるいは現在価値にどういった影響を及ぼすかを常に考えていただければと思います。

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